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2008 - 5 /21
伏美岳で山の怒りを買う
見えないものが見たくなるというのは、たぶんぼくだけが持っている特異な性質というわけではないと思います。
久山岳の後ろに隠れててアタマしか見えない伏美岳の全容を、どうしても見たくなったのです。
朝4時半に起きたにもかかわらず、登山口に着いたのは8時をすぎていました。
辻と辻との距離がハンパなく離れてるという十勝マジックの罠にはまったのと、伏美岳登山口への道が思いのほか分かりづらかったのが原因ですが、テント場であまりにゴロゴロしすぎたのも大きく影響してるでしょう。
たぶんベテランの山屋さんなら、楽に2時間は早く行動できるはず。
この2時間の差であとあとひどい目に遭おうとは、のんきなぼくにはまるで分かっていませんでした。
キャンプ地を出るときには見渡すかぎり青一色の空だったのが、車を走らせてるうちに山々のピークの上空に小さな雲がプカプカ浮かびはじめ、登山口に着くころには天候悪化の兆候が感じられるまでになっていました。
1/500秒で時間を切り取れば、絶好の登山日和にしか見えない。

850hPa高層天気図と昨日のこの地方の天気の推移、それに今日の朝からの観天望気をあわせて考えれば、午後2時くらいには雨が降り始めることが予想されます。
この予想は、ある部分では大当たりし、ある部分では見事に外れました。
外れたのは、'雨が'降るという部分
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伏美岳の地図


登山口の標高は約700m。
山頂まで1100m弱の一気登りの始まりです。
傾斜がゆるいのは最初だけで、残雪に埋まる小さな谷をまたぎ、トレイルが南に向きを変える標高800m地点から先は、直登の見本のような登りが続きます。
8時52分 941m地点
つねに尾根筋を歩くので見通しはわりといいです。

とはいっても樹林帯の中なので、あと半月もすれば鬱蒼とした森になって、まわりの風景を楽しみながら歩くことは出来なくなるでしょう。
ジグとかトラバースとかスイッチバックなんてものとは縁のない本気の直登なので、一歩一歩と登るたびに遠くが見えるようになり、飽きることがありません。
ただそれと同時に、休憩するような場所もなかなかないのです。
9時08分 1084m地点
3合目から見える久山岳。

標高が1000mを越えたあたりからちらほらと残雪が見え始めますが、標高1200m地点からのわずかな距離だけ、つかのまの平坦地になります。
今までの登りとこの先のさらなる登りを思えば天国のような場所で、テントを張れるようなところも少しならあります。
9時33分 1211m地点
つかのまの平坦地

そしてこの平坦地から先、いよいよ本格的な残雪があらわれます。
夏道は尾根筋のわずかに北西側に付いていて雪はありませんが、数メートルの藪をへだてた南東側には雪がたっぷり残っていて、ぼくはより見晴らしのいい雪の斜面を登ることにしました。
9時40分 1230m地点
雪の上を歩くのはやっぱ気持ちいい、けど、

すでに青空は遠くに去り、あたりは薄暗く、そして空気もひんやりしてきました。
標高1400mを超えると、夏道はもうどこにもありません。
雪の斜面を行くよりほかないのです。
ストックを腰丈まで短くし、四つ足で登ります。
10時25分 1492m地点
向こうの山には陽が当たってるが、夏山JOYな雰囲気はどこにもない。

すると、雪をふむ足音以外に、カラカラという音が時おり聞こえてきます。
ついに降り始めたのです。
でもそれは、雨ではなく、霰でした。
霰が木の枝に当たる音が、カラカラと聞こえてきていたのです。
山頂ははっきりと見えるし、十勝平野はまだ晴れているので、いましばらくは持ってくれそうですが、もはや天気が回復する見込みはありません。
ここから先のピッチを上げるために今日最初の休憩をとって、行動食を多めに食べます。
10時49分 1638m地点
カッパをの上下を着込み、いざ再スタートです。

落ちてくる霰は、ときに雨に、ときに雪へと変化して、春の山を甘く見ていたぼくに引き返す口実を与えてくれるかのようです。
傾斜はさらに上がり、息は乱れ、指は凍え、手足の筋肉がパンプしはじめます。
もう風景を楽しむ余裕もなく、足元の雪だけを見つめての登高が続きます。
11時14分 1760m地点
南側の林が切れて妙敷山が姿をあらわすと、いよいよ日高の稜線です。

山頂はもうすぐそこです。
短いハイマツの回廊を進むと、山頂標識が見えてきました。
そして11時30分、1792mの伏美岳に到着です。
ジェームスのお面は笑ってるけど、ホントのぼくはかなりヤラレてます。

疲れた体を休める前に、ぼくは日高の山々の大展望に息を呑みました。
西も東も南も北も、どこまでも続く山また山、そして深い谷。
大雪山を北アルプスにたとえるなら、いうまでもなく日高は南アルプスです。
なんという大きな山脈。
伏美岳からのパノラマ
![]()
(1244KB;要Flash Player ver8.0.24 or later;別窓で開きます)
白いものがパラパラと降ってくる山頂で、この大パノラマを眺めながら、清水のパン屋で買ったメロンパンとアンドーナツの昼食です。
重い目して持ってきたミルで豆を挽き、プレスでいただく至福のコーヒーは、シティローストで煎り止めたトラジャ・カロシ。

マンデリンなんかもそうだけど、インドネシア産のヘヴィメタリック&ハードロッキンなお豆さんは、プレスで淹れると別次元の重厚さを味わえて、山頂コーヒーにうってつけです。
できることなら、2時間でも3時間でもここに留まっていたいという思いは強いですが、もうじき天気が荒れだすのは明々白々。
下山の仕度にかかります。
山頂にはぼく以外に、「十勝こまくさ会」の方々がおられました。
先生と呼ばれていた男性がひとりと、女性3人からなる4人パーティで、たぶん男性の方がリーダーなんだろうけど、みなさん経験豊富な山ヤさんのように見受けられました。
少しばかり立ち話をしたあと、ぼくより先に下りて行かれました。
風がどちらから吹いていて、雲がどこから湧き上がっているかを確認し、今どこの山に雨(あるいは雪)が降っているかをしっかり観察し、ぼくも10分遅れで伏美岳の山頂をあとにしました。
前ばかり見て歩いてきた登りではあまり気にも留めてなかったけれど、けっこう急な下りです。

靴底グリセードがぐんぐん加速していくほどの斜面は、コケどころが悪いと一気に滑落するおそれもあるので、足と心にブレーキをかけて、安全第一で下っていきました。
標高1607m地点で、立木にピンクテープを巻いている「十勝こまくさ会」の方たちに追いつきました。
雪面に突いたストックのバスケットが、雪の中で外れてしまったとのこと。
雪がとけたらテープを目印にバスケットを探しに来るそうです。
買ってもたいして値の張るものではないけれど、見捨てていけばゴミになるだけです。
見習おうと思っても、なかなか出来ることではないなぁ。
「十勝こまくさ会」の方々を追い越してしばらくすると、上空がどんどん暗くなってきました。
と、その刹那、、、、、ズドーン!!
ついさっきまでいた稜線のほうに落雷したようです。
こりゃヤバいわ。
空気が震えてやがる。
炸裂音は、しばらく谷間を縦横にこだましてから、山に吸い込まれていきました。
のんびりなんてしてられない。
山が本気で怒り出す前に帰らないと。
膝をかばう事も忘れて、足を大車輪にして山を駆け下りていきました。
無事に里までたどりつき、おそるおそる振りかえって見た伏美岳は、「また来いよ」と手招きしているように見えました。

終日快晴の山歩きも楽しいけれど、ケガしない程度にハプニングに見舞われるのも悪くないものです。
今回の伏美岳の記憶も、海馬の襞の奥深くにまで刻み込まれ、きっと思い出深い山旅になることでしょう。
10年後、深煎りのトラジャを口にしたとき、思いがけずこの伏美岳の思い出がよみがえってくる。
そんな日が訪れるのなら、これほど幸せなことはありません。
投稿者 hamayo : 2008年5月21日 22:47
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どーも、こにゃにゃちわ。
いやいや、夏山JOYっていうか、いくら今年は雪が少ないとは言え、この時期に日高とは・・・完全に山屋さんじゃーないの!
ん~、白き山脈が連なるビックパノラマが素敵。
そんな素晴らしい風景を前にして飲むこだわりのコーヒー・・・さぞかし美味かった事でしょうね。
ズドーンってやっぱね、これからのネタ的展開がある意味楽しみだす(笑)・・・カムバック○天子爵!!
嗚呼山の神よ、彼を許したまえ。
伏美でお会いしたhamayoさ~ん、十勝こまくさ会のkoyukiです。お写真撮って下さってありがとう!
もっと早く到着されていたなら一緒にテーブルを囲みたかったですね^^)。
koyukiだけ初登頂ですが皆さん何度も足馴らししてるベテランです。
あの雷様はキット歓迎の祝砲かも^^・・・
パノラマ画像素晴らしいですね!山の名前が良く解かります。
日高の山はアルピニストにとって極めたい山らしいですね。
あ~~あ、おにぎり1個残っていたのになぁ~。
十勝に来てくださってありがとうm(__)m
to kacchinさん
ボンジョールノー kacchinさん
かなりココロは久山岳に傾いていたんだけど、もっと見せてよ伏美岳って感じで登ってしまいました。
んーでも御影と伏美岳登山口はかなり遠かったなぁ。
はじめから伏美岳にいくつもりだったら、登山口に入る林道ならどこでもテント張れたんですよねー。
この山のビッグパノラマはちょっとしたものですよ。マジで。
日高の巨人たちがドーンやもんなー。
パノラマ百名山なんてのがあったなら、たぶん選ばれるんじゃなかろうか。
雷ズドーンはね、いくら子爵でも直撃は堪忍ですわ。
ネタ的に最終回になってまうし(笑)。
to koyukiさん
どーもこんにちは~。
山頂の奥座敷でおでんを食べられたんですって?
いいなぁ。。。
早くに着いてたら、誘われなくてもにおいに引き寄せられてお邪魔してたかも(笑)。
> あの雷様はキット歓迎の祝砲かも
祝砲だと思えば楽しくなりますね。
ぼくはもうエラいびびっちゃって逃げるように走り降りましたけど。
日高の山は山も大きいし谷も深くて、それが山屋さんを引きつけるんでしょうね。
小樽からだとそうそう何度も出かけられませんが、またぜひ行ってみたいです。
十勝に住んでるkoyukiさんがうらやましい!
オッサン、テレ持ってった方が良かったんちゃうけ?!
美生川を上がる道は分かりづらいかもしれんなー、初めてやと。
せやせや、ハナっから伏美岳て決めてたら伏美湖の横に東屋あって、釣人しか来ん人っ気のないキャンプ場丸出しのとこあるでな。
あっこなら起きて2時間後には登り始めれるで。
ゆうたかてココ、実質3時間も掛からんと登れてまうお山なんやな。
雪渓のおかげでガシガシ上がれるっちゅうのもあんやろうけど、日高のお山のイメージからすると随分お手軽なお山やな。
しゃーけど、尻別岳の滑落がすっかりトラウマのワシにはこの時期は無理かも。
簡易アイゼンでもないとこわーて下りてこれん・・・(汗)
稜線の鋭さがさすが北海道で唯一の山脈だけのことはありますな、ふむふむ。
脈の先の『いつかは幌尻』が渋いやねぇ(ムジヲ!カムバーック!!)
ホンマやで。
こんだけ雪あったら、テレでもじゅうぶん楽しめたわ。
板を担ぐなんて気はさらさらないけーど(笑)。
美生川を上がる道ちゅーか、もうそれ以前の問題やったんよ。
このエリアに入るまでの道で右往左往してもうてな、山に着く前にGPSに助けられたわい。
山は山で迷いようのない直登やし(笑)。
アプローチも含めて、こんなにすんなり山頂を踏めるのは、日高の中でもそないないんちゃうか。
剣も久山も芽室も、その点でいやぁワシらみたいななんちゃって山ヤにはうってつけですな。
芽室岳は距離が少し増える分ここより少し傾斜が緩いよってに、さらにお手軽やろうて。
> 『いつかは幌尻』が渋いやねぇ(ムジヲ!カムバーック!!)
ノンポール幕営 in 七つ沼カールの伝説は、たぶんヤツが最初で最後の偉業やと思われ。
ワシはメジャー指向はそんなに無いから、たぶん幌尻に行くことはないやろうけど、ナメワッカとかには惹かれるなぁ。
こっちはこっちで、体力的に行かれんやろうけどな。