« 2008年9月 | メイン | 2008年11月 »
2008 - 10 /20
烈風紋別岳 雪のち晴れ
裏山のカラマツ林がいっせいにざわめく音は、無雪期の登山シーズンに終わりが近付いてきた合図です。
それは今年最初の季節風が尾根をこえて吹きおりてきたことを意味します。
10月の寒気はまだ、冬将軍のような忍耐力こそ備えていませんが、それでも西海岸のこの地域を一・二日灰色にするぐらいは朝めし前です。
こんな日は西風の届かない太平洋側へのトリップが、Viscountが取るべき最善の選択になります。
紋別岳GPSトラック

紋別岳コース断面図

途方もなく抜けのいい尾根歩き
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
■明るい道
林の木々が葉を半分ほど落としたせいで、足もとに明るい光が届きます。
おおかたはカシワの木で、シラカバも混じっています。
関西の山でカシワといえば、冬でも枯れ葉を落とさない木のイメージですが、北海道ではどうなのでしょうか。
カサカサ、ガサガサ。
乾いた落ち葉を蹴散らしながら歩く尾根道。
静かな秋の午後です。

■寝床を探して
前回のニセコとは違い、初めて歩く山ではなにも情報がありません。
ましてや、「テントが張れそうな場所」などといったものは、事前に手がかりを得ることは期待できません。
日没までに残された時間と、目の前にあるキャンプ適地、そしてこの先にあるかもしれないシャングリラとを天秤にかけ、進むか留まるかを判断します。

ですがこの、「頼れるのは自分の勘」といういつもとは異なる緊張感に包まれながら尾根を登っていく作業は、いやな種類のものではありません。
心の中で起きている不安と好奇心との戦いで、いまだどちらが勝利するのか分からない拮抗した状況を、ぼくはひそかに楽しんでいます。
■北風と太陽
イソップの童話ではいつも太陽の勝利が描かれていますが、どうやらぼくの周りの現実はいつもそれとは逆になるようです。
さっきまでにこやかに微笑んでいた太陽の神様は、いつの間にか風神へと姿を変えていました。
樹林帯を抜けて飛び出した7合目から見えたのは、大暴れする北風の神ボレアスです。
この稜線の先に理想郷があるとは到底思えません。
16時11分、進むのをやめて、無いよりまし程度の木々が風をやわらげてくれるこの場所でテントを張りました。

■non-freezed Dry food
北風の夜に、炊き込みご飯を食べながら・・・
かつて長期縦走をしていたころは、荷を軽くするためにフリーズドライ食品をよく使ったものですが、日帰り登山ばかりするようになった最近では食料の重さに頓着しなくなり、オートキャンプの料理のようなものを求めるようになっていました。
ところがある日、海外の人のBlogの中で、「日本のトラディショナルな乾燥食品はバックパッキングの食事としてとてもグレイトだ」として、「ひじきと麩を味噌でといたスープ」が紹介されているのを見かけたのです。
勉強熱心な外国人観光客が、ときに日本人よりも詳しく日本のことを知っているのと同じように、彼らは私たち日本人が忘れかけている古よりの食文化を発掘したのです。
衝撃でした。
山で食べる食事くらい、できれば添加物まみれの'おいしいゴミ'は食べたくない。
海草類やダシ取りだけじゃなく、切り干し大根や高野豆腐、アルファ米だって「糒」を横文字にしただけだし、日本の伝統食品にはまだまだパワーがありそうです。
山の和食に夢がふくらみます。
■月と初雪
食事をしているころから降り始めた雨は、荒れ狂う北風に乗って烈しくテントを叩きます。
10分降って 10分晴れるといった、典型的な冬の降り方です。
やみ間に外へ出てみると、蒼い月が山の上に出ていました。
流れる雲のなんと早いことか。

テントに戻ると、HEX3の周囲を六角形に囲むように、白い輪が光っています。
雪です。
降った雪が幕体を滑り落ちて、裾に積もったのです。
こりゃ今夜は冷えるぞ。
■夜明け
たとえ時計のアラームが鳴らなくても、不思議と日の出の時刻に目が覚めてしまうのは、山の上でキャンプしたとき特有の現象かもしれません。
地球と一体になれた気がするこんな朝を、青空とともにむかえることができたなら、今日一日の幸運が約束されたも同然です。

ぼくの体に命を吹き込んでくれた太陽の光はこの山のすみずみにまでふりそそぎ、白く霜をかぶった草原を融かし金色に輝かせます。

■暴風の稜線、広大な笹斜面
ゆうべの雪はすっかり消えてしまったようですが、西よりに向きを変えた風はいまだ衰えることなく吹き続けています。
笹の斜面を駆け上がってくる風が真横から吹き付けてきます。
さえぎるものの無い7合目から先は、倒されると谷底へ落ちてしまう場所もあり、低山とはいえ気が抜けません。
「つよい風のとき キケン 中止を」という看板はダテではないのです。
それでもこの抜けのいい景色の中を歩ける喜びは、氷雨ふる夜を越えてきただけにひとしおです。

いくつものコブを超えていくこのコースは想像以上にアップダウンが多く、稜線歩きといっても見た目ほど楽ではありません。

■山頂への期待
狂ったように吹いていた風とは前紋別岳のピークでお別れです。
ちょっとした地形の変化なのか、ここから先のトレイルではもう風を気にする必要はありません。

さっきまでの笹斜面から趣きを変えて、シラカバの疎林の中を山頂へと続く道。
その先には、洞爺湖、そして羊蹄山が待っているはずです。
■記念撮影
これほどまでに透きとおった青空の下で山頂を踏めたのなら、自分が祝福されていると勘違いしても無理はありませんが、謙虚な気持ちも忘れてはいけません。
記念写真の主役は自分ではなく、青空に譲るべきです。

朝8時の山頂にはもちろん誰もいません。
360度をひとりじめです。
・紋別岳からのパノラマ
QuicktimeVR版 はこちらをクリック(977KB)
Flash版 はこちらをクリック(1088KB)
■ぽかぽか陽気
太陽が高くなるにつれて気温も上がる帰り道は、足どりも軽くなります。
春のようにやさしい光がそそぐ尾根道を歩いていると、凍てつく風に吹かれた昨夜の記憶はすっかり溶けてなくなってしまいました。

どうやらぼくは山頂よりも、山と山のあいだのほうが好みのようです。
紋別岳の山頂ではなく、ただの尾根道から見るこのパノラマにたまらなく惹かれるのです。
・紋別岳8合目付近の鞍部からのパノラマ
QuicktimeVR版 はこちらをクリック(876KB)
Flash版 はこちらをクリック(907KB)
どこまでも続く笹の斜面を風が渡っていきます。
その向こうに噴火湾が見え、さらにその先には駒ケ岳や道南の山々が浮かんでいます。
目を閉じて、この斜面に雪が積もったところを想像すると、シールを利かせながら雪原を進むスキーの音が聞こえてきそうです。
■お気に入り
山頂を後にして、テントをたたんで尾根を下りるとき、ひと仕事終えた後のような充足感が満ちてきます。

こんな感慨の中で風景を見ると、絶景とは、月に照らし出された山脈や、あかつきに燃える稜線だけではないことに気付かされます。
どこにでもある木々、盛りをすぎた草花、なにげない景色が輝いて見えるのです。
またひとつ、素敵な山と出会うことができました。
パタゴニアのフィッツロイやチベットの梅里雪山などとは、比較の対象にさえもなりませんが、この山にはこの山にしかない魅力があるのです。
この山で寝られたことは幸せです。
いつかまた、雪の季節に。
サンクス、伊達の紋別岳。
投稿者 hamayo : 23:24 | コメント (10) | トラックバック
2008 - 10 /19
お知らせ -プラグインについて-
山にいった時のエントリなんかで、パノラマ画像のコンテンツがあったりなかったりしてますが、いままでFlashで作成していたこれらを、今度から QuickTime VR(以下QTVR) で作ることにしました。
QTVR のほうが映像の質感もいいし、操作は共通だし、より「パノってる感」があるし、なぜかファイルサイズも若干小さくできると、いいことずくめ・・・に見えます。
ということで、いちおうダウンロードページへのリンクをば。
まだ入れてなくて、これを機会に入れてみるかな、って方はどうぞ。
右サイドバーのバナーをクリックしてもダウンロードページにいけます。
*QTVRの表示に iTunes は不要です
ただデメリットもあって、QTVR のほうが表示されるまでに少し時間がかかるというのと、パソコンが非力な場合は動作がもたつきがち、という傾向があります。
なので、Flash版も並行して作ります。
Flash版 は Flash版 で、スクリプトもゼロから自分で書いたものなので、愛着あるし。
投稿者 hamayo : 22:37 | コメント (0) | トラックバック
2008 - 10 /15
ズッキーニの肉詰めとペンネのトマトソースグラタン
ラタトゥイユの記事のときに、ズッキーニの代わりにキュウリを使ったと書きましたが、ナント!灯台下暗し、権蔵さんがズッキーニを育てていました。
キュウリ以上に爆発的な実りかたをするらしく、どんどん食べていかないと大変なことになるのでご近所におすそ分けをしたら、そんなハイカラな野菜は食べ方が分かりません、と言ってもらってくれないそうです。
なんだ、そういうことならぼくがどんどん食べてあげますよってことで貰おうとしたのですが、権蔵さんちのズッキーニはもう終わってしまったとのこと。
それは残念・・・。
権蔵さんちのズッキーニは来年に期待するとして、やはりズッキーニを使って料理をしたい、今年のうちに。
どうあってもズッキーニを! というわけで、権蔵さんちのある集落の農家さんたちが主催する野菜市で、もぎたてのズッキーニを手に入れました。
時期的にいきのいい夏野菜はもうないので、グラタンにしていただきました。

ズッキーニの肉詰めとペンネのトマトソースグラタンです。
ズッキーニを半分に切ってワタを取り、コリアンダーとナツメグで下味をつけた挽肉を詰めます。
味付けは塩とコショウで。
多めのオリーブオイルで転がしながら炒めたら、取り出して輪切りにし、トマトと一緒に20分煮込みます。
茹で上げたペンネと一緒に耐熱皿に入れ、モッツァレラとパルミジャーノを乗せてオーブンで数分。
う~ん、こりゃぁ素朴な田舎料理風で、たいへんおいしく野菜をいただけました。
投稿者 hamayo : 12:47 | コメント (4) | トラックバック
2008 - 10 / 6
ニセコ山中で隠密野宿
夏の盛りには「はやく雪降れ」などと口走っていたのに、秋が深まってくると「もうちょっと待ってくれ」という気持ちが優ってきたり。
ま、そんなもんだ。
なわけで、まもなく冬を迎えるニセコの山の中に、露営用具をいっさい背負って行ってまいりました。
隠密野宿。
ここでぼくが野宿していることは、誰も知らない。
凍死しても、クマに食われても、誰にも分からない。
そんなデカいテントじゃバレバレだ
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
■雪化粧
秋の空は開放的だ。
麓の畑では休みなく農作業が行われている。
この雄大な独立峰は、天井の高い秋の空のもと、いつもより機嫌がよさそうに見える。

羊蹄山の上部は早くも白くなっている。
あの場所からは、もう秋は去ってしまったのだ。
こことは違う世界には、きっと不機嫌な風が吹いているのだろう。
山頂部に雲がまとわり付いているのが少し気になる。
今日も明日も、雨は降らない予定なのだが。
■ククルカンのピラミッド
上富良野岳の階段が段数を語るなら、こちらは段高で勝負を挑もう。
メキシコ・マヤ文明の、ククルカンのピラミッドを髣髴とさせる、急峻な階段。
そして一段一段の段差が、とても高い。

強引なストレッチは体を痛めるとは良く聞くが、ここの階段はまさにその強引なストレッチそのものだ。
ハムストリングが鳴き、股関節が軋む。
脇の斜面に逃げたとしても、ズリズリとすべる足元に耐え切れず、すぐにまた階段に戻ってくることになる。
このトレイルで最も体力を消耗するのは、スタート地点にあるこの階段だと、断言できる。
■錦秋、秋色
今年の紅葉は、色の乗りがイマイチ良くない。
くすんでいる。
錦秋などとはとても呼べない。
秋色、くらいが相応しい。

好みの問題ではあるが、赤一色とか黄一色とかよりも、常緑の緑にバランスよく色が混ざっているほうが良い。
そこにシラカバの白い樹肌や、うねるハイマツの黒い幹が見え隠れすれば、もういうことはない。

■火口原
目の前はガレの登り。
このあたりも野宿するにはよさげだけど、最低限あそこまでは上がらないと、沼めぐりハイカーの目に留まってしまう。

広いガレ場を登り終えると、山頂火口の一角に出る。
火口原は丸くて平ら、野球場のグラウンドぐらいの広さだろうか。
そう思うと外輪山が観客席に見えてくる。

外輪山は馬蹄型をしており、南西部分が切れていて、少し下がった先にもうひとつ小さな広場がある。
こちらは火口原というよりは、火口に溜まった液体があふれて流れ出したような雰囲気。
上の湯、下の湯、みたいな。
どちらも黄灰色の火山灰土と、多孔質の軽石で埋め尽くされていて、砂の湖のように見える。
フカフカでザクザク。
さらに歩く。
■ぎりぎりセーフ
雲行きが怪しい。
日没の時間を考えると、そろそろ寝る場所を探さないといけない。
足元にはいくつものクリークが走っている。
大きなものは幅1m、小さなものは10cmくらい。
いまは涸れてるが、ひとたび雨が降ると水路になる。
そんなところにテントを張るわけにはいかない。
クリークがなくて、平らなところでも、周りより低い場所はいけない。
それは水たまりの跡だ。
30分くらい歩き回って、地図が描けそうになるころ、場所を決めてテントを立てた。
クリークが枝分かれして、中州のようになった場所で、そこだけ少し高くなっている。
ここ最近、水に洗われた痕跡はない。
でも考えてみれば、今日はHEX3だった。
床がないHEX3は、障害物があってもそれを取り込んで設営できる包容力がある。
テントの中に、水が流れるクリークがあるなんて、風流かもしれない。

最低限のペグダウンをほどこし、中に入ったら、ちょうど雨が降ってきた。
西の空は真っ黒だ。
ぎりぎりセーフ、なんとか間に合った。
■雨の日のテント生活
雨はしとしと降っている。
やむ気配がないので、外に出る気にはならない。
雨の日のテント生活は、退屈だからと嫌う人が多いけど、ぼくはぜんぜん嫌いじゃない。
やるべきことはたくさんあるし、なにもせず横になって雨が降るのを見ているだけでも、小さな発見に心躍ったりするものだ。
そんな中でも、コーヒーを丁寧に淹れる作業は、この上ない至福の時間。
今日のために用意したのは、コスタリカ産の特別なコーヒー、カフェティン・サン・マルティン。
焙煎器を持ってこなかったことは悔やまれるが、2日前に焙煎しておいたとっておきの豆は、今日ちょうど飲み頃になっていた。

柑橘系のフルーティな酸味が、このうえなく上品な飲み口だが、おやつに持ってきたオレオには全然合わない。
テントのそばで山ほど実ってる木の実は、甘すぎてこれまた合わない。
というか、こんなに木の実あるのなら、紅茶を持ってくれば良かった。
雨は降ったり止んだりだ。
■夕照
夕方になると、外が明るくなってきた。
西の地平線付近は雲が薄いので、日没間近の太陽がここを照らしてくれたのだ。

でもそれは、ほんの一瞬だった。
ふたたび太陽が雲に隠れると、テントの周りの気温はぐっと下がりはじめる。
それと同時に、風景は急速に明るさを失い、まもなく夜がやってくることを知らされる。

夕食前に、周囲の尾根をぐるっと一周。
雨が落ちてこないうちに、斜面を駆け下りてテントに戻る。
■幻のパエリヤ
夕食は鍋焼きうどん。
鍋焼きうどんが食べたかったわけではない。
食べたあとの鍋を使って翌朝パエリヤを作るのだ。
中学生の頃は、コッヘルを買う金など無かったから、よく鍋焼きうどんのお世話になった。
食べたあとの鍋で粉スープを戻したり、袋ラーメンをゆでたりしたものだ。
でも昔日を懐かしんでいる場合ではなかった。
緊急事態。
鍋焼きうどんのアルミ鍋の底に、小さな穴が空いている。
点滴のように、規則正しく一滴一滴うどんつゆのしずくが垂れてくる。
このままじゃうどんが茹だるころにはカラッポだ。
ソフトクリームのコーンの底をくわえるみたいに、ちょろちょろ食べるわけにもいかない。
まもなくうどんは、極小コッヘルの中に押しこまれ、うどんとしては食べられるものが出来上がった。
だけど鍋は使えない。
かくしてパエリヤは、幻となった。
■死の湖
雨がやむと風もおさまった。
静かすぎる。
雪洞の中のような、閉鎖的な静けさではない。
天球は無限の宇宙に向かって開いてる。
広漠たる静けさ。

何にも聞こえない。
木の葉がすれ合う音、動物の足音、水が流れる音、なにひとつ聞こえない。
それだけじゃない。
生き物の気配や息づかいといった、生命の感触がまるで感じられない。
山で泊まった夜は、獣の気配を肌で感じて、いつもより少し緊張するのが常だし、それが楽しみでもあるのだが、今夜ほどそれが感じられない夜は初めてかもしれない。
無機質な夜。
月面には「死の湖」という名の地形があるが、ここのような場所なのだろうか。
命あるものはすべて飲み込まれていく。
静かに飲み込まれていく。
気が付かないうちに。
そしてぼくもまた。
■飛礫
真夜中に目が覚めた。
雷雲は去ったようだけど、強い風が吹いている。
パツパツと、幕体を叩く音がする。
嵐がやってくる直前に、晴れた空から大粒の雨がまばらに落ちてくることがあるけど、そんな感じ。

HEXの裾をめくって外を見るが、雨が降っている様子はない。
星が出てる。 ・・・「パツ」
また何か当たった。
正体は、雨粒じゃなくて、小石が風に飛ばされてテントに当たる音。
ここは火山だ、軽石はいくらでもある。
ここの石はほとんどが軽石だから、今日のような強い風が何日も続くと、景色が変わることもあるかもしれない。
砂漠みたいに。
でも、ちょっとうるさいな。
■だめだこりゃ
朝は雨とともにやってきた。
どしゃ降りだ。
そしてすさまじい風。
辺りはガス、というか雲の中。

「参天は冬にしか使わないよ」とぼくが言ったことに機嫌を損ね、「竜巻でも飛ばされなかった実力を見せてやる」とHEX3が息巻いているかのようだ。
もう分かったからいいよ。
風にはビクともしない。
シルナイロンは一滴の水も通さない。
でも結露でびしゃびしゃだ。
横殴りの雨だと、ベンチレーションから風に乗って雨が入ってくる。
そんなところだ。
こんな天気じゃもう下山するしかあるまい。
あ、雨なんてたいして降らないと思って、ソフトシェルしか持ってきてないや。
■びちょびちょだ
ザックの中は、シルナイロンで完全防水。
カメラもレンズも、ジップロックを二重にして防水。
だけど自分の体はソフトシェル。
雨は通さないけど、ザックのハーネスに締め上げられたところから、じわりじわりと染みてくる。
トレイルは川になってた。
水はけのいい火山灰土も、これだけ降れば保水しきれない。

雨の日の紅葉もまたいいもんだ、などというのは帰ってきてから思うこと。
秋の山で雨に当たるのは、惨めなことこの上ない。
寒い、冷たい。
パエリヤが食えなかったから、行動食しか口にしてない。
だからよけいに寒い。
これじゃ修行だ。
■温泉に感謝
もう楽しみといったら、下山後の温泉しかない。
五色温泉が待っている。
冷たいガレ場を通り、豆乳色の水が流れるトレイルを渡り、ククルカンのピラミッドを下ると、ようやく下界が見えてきた。
なぜか雨は小降りに。
遊歩道の先に五色温泉。

下山したのは8時30分だが、五色温泉は朝8時から入れるのだ。
誰もいない平日の朝の露天風呂。
雲の中から出たり入ったりするアンヌプリを見上げながら、2時間ちょっとの湯浴み。
芯まで冷え切った体もぽっかぽか。
温泉のありがたみは、こんな目に遭えばなおのこと強くなる。
サンクス、五色温泉。
そしてイワオヌプリ。
