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2010 - 3 / 8
細尾根の藪テレ、そして老人の記憶
谷向こうの右岸尾根は、昨年までで最も奥まで入り込めたルートです。
問題は尾根の前半部分にある三角点ピークで、ここの斜面はつねに雪が深く、かつ密林で、スノーシューでさえ直登はできず、テレマークでの斜登高も毎分5mほどでしか進めず、前半でいきなり体力を消耗してしまうのです。
しょっぱなからあの山の頂まで登ります。
見た目を大きく裏切る、死にもの狂いの直登なのです。

三角点が置かれるだけあって、この裏山随一の展望が開けそうなのですが、あいにくの雪模様・・・。

雪庇の張り出しもなかなかのもので、実はストックが雪庇を踏み抜いて、曲がってしまいました。
スキーの時は、足もとだけでなくストックの先も雪庇に気をつけないといけませんね。
ここまででかなり体力を消耗してしまいましたが、気を取りなおして尾根筋を進みます。
しかも密林。
スキーで行くべきでないことだけは確かです。
パチンコ玉のように木と木の間をくぐり抜け、体のあちこちに青アザを作りつつ四ツ峰との鞍部まで下りてくると、なんとなくかつて人がいた気配が感じられます。
火の用心の看板は、木の幹のかなり高いところに打たれています。
おそらく看板が取り付けられたときには、まだ木も低かったのでしょう。
そしてミズナラは、まだこの里山が里山として機能していたころの記憶を残しています。
広々としたこの鞍部から見える四ツ峰の尾根。
4つの小ピークを越えれば、500m台地のはしっこに出られることは分かっています。
しかしじつは、この段階でぼくはかなり疲労していました。
なにより帰り道が不安でした。
500m台地まで行けたとしても、帰りにまたこの密林の細尾根を登り返すことなど考えられなかったのです。
細尾根を通らず谷筋を下るにしても、その対岸の斜面を降りるにしても、未知のルートで引き返すのなら、体力の残っている今がターニングポイントでした。
頂上への確かな足がかりを掴みつつも、後ろ髪をひかれる思いで引き返すことを決断しました。
帰路は次回のことも考えて、谷に沿って下っていきました。
油断すると谷底へ向かって降りていきそうになるスキーを、なんとか高度を保って密林を進むのは思いのほか困難な作業で、ストックは役に立たず、生い茂る木の幹や枝にしがみつき水平移動する、それはもう沢登りで言う「へつり」に近いものでした。
行きのトレースに合流したときには、安堵感ですっかり力がぬけてしまいました。
このルートを、スキーで辿ることは二度とないでしょう。

そして・・・
家の前で装備を解いていると、知り合いのおじいさんが話しかけてきました。
「おやぁ、hamayoさん。
あんたスキーやんのかえ?。
よく裏山に行ってるみたいだけど、あんまり変なところ
行って遭難せんといてくれや。
おらたちみんなで探しに行かんとなんねーからな。」
となりのとなりに住んでるこのおじいさん(Mさん)、じつはスキージャンプで2度のオリンピック代表に選ばれた某選手の親父さんなのです。
そのことはずっと前から知っていましたが、いままで一度もスキーの話をすることはありませんでした。
そのMさんが雪かきの手を止めて、ぼくのスキーを食い入るように見つめています。
「テレマークなんですよ。」
それがきっかけでした。
Mさんは、いまぼくが下りてきた山の方を見ながら、ぽつらぽつらと話し始めました。
遠い昔の話し。
それは、とてもとても興味深い話しでした。
「おらぁ子供のころ、ここに滑降のコースがあってな、よく
登ったもんだ。
すんげぇ急斜面だべ。
止まろうと思っても止まらねーんだ。
止まるったらコケて止まるしかねーんだけんど、コース
って言ってもただの林だべ、木がいっぺぇ生えてっからよ、
危ねぇったらねーんだ。
行きゃぁ必ず誰か、腕やら足やら骨折して帰ってきて、
よっく怒られたもんだ。」
はじめのうちは、お年寄りが昔を懐かしんで話す武勇伝のたぐいだろうと、話半分に聞いていました。
でもMさんの話す内容をよく吟味すれば、そうではないことはすぐに分かりました。
尾根と谷との位置関係、斜面の具合や山のかたち、尾根の上から見える風景、それらはこの裏山を繰りかえし歩いた人でなければ言葉にできない種類のものです。
山では負けて帰ってきた今日ですが、Mさんの話しにとても勇気づけられました。
頂上へ至るルートは必ずある、という確信めいたものをしっかりと感じました。
次は残された最後のルート、谷ルートから頂上をめざします。
投稿者 hamayo : 2010年3月 8日 22:01
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果敢にアタック!!500mの台地は思いのほか遠い存在ですね~~~でも今回は・・・とかなり期待して読み進めましたが残念!!
でも、いつもドラマは大逆転で最後に勝利を納め最高の笑顔でフィナーレでしょ。(笑)
近所の爺ちゃんの話・・・
素朴な語り口で夢物語を聞かせてくれる。hamayoさんには最高のエールでしたね!!
そして最終回はどうなったの???
こんにちは。
あの街のどこか、山の麓にお住まいなのに、
坂の事も、お菓子の話も、運河の話もあまり出てこない事に
どこか清々しさみたいなものを感じながら読ませて貰っています。
きっとそれは、住んでいる方の日常の視線なのでしょうね。
hamayoさんのblogは、起きがけに見る夢と現実と間の様で、
まるで絵本の物語の様に楽しく拝見させてもらっています。
今度はご老人の記憶をご自分の足でトレースされるのですね。
お気を付けて。
では。
to 若葉さん
近くに見えて、なかなか遠いんですよ~。
山好きの人たちの中には、ヤブ山志向の人たちが少なからずいるって事は知ってましたが、自分には関係ないやって思ってました。
でもこれがハマるんだわ(笑)。
最終回?
全50回ですってば(ウソ)
to ushione
こんばんは。
誰も目をとめないような場所で、ひっそりと咲く花のようなものに、とても興味がわくののです。
ぼくはたぶん、あまのじゃくなんです。
> 今度はご老人の記憶をご自分の足でトレースされるのですね。
ushioneさんは千里眼の持ち主ですね(笑)。
まさに、そういう文章を今書いていました。
よく国語の試験問題にでてきた、「この物語に作者は何を込めようとしていたのでしょうか」ってやつ、得意だったでしょう。